スマートフォンの普及などを背景に、子どもたちが自分の裸を撮影した「自画撮り」による児童ポルノが問題視されている。警察庁によると、昨年検挙された児童ポルノ事件の被害のうち、約4割が自画撮りによるもので、被害者が自ら進んで犯罪に加担してしまうケースも少なくない。専門家らは「ごく普通の子たちが安易に行っている傾向にある」と警鐘を鳴らす。【加藤沙波】
警察庁によると、2015年に児童ポルノ事件の被害が特定された18歳未満の子どもは905人と過去最多を記録。そのうち、自画撮りによる被害者は376人で全体の4割を占め、統計を取り始めた12年から1.8倍に増えた。被害者の半数以上が中学生で、高校生は39%、小学生も5%に上った。
愛知県警中村署は今年1〜7月、当時14〜17歳の女子中高生に自画撮りさせ、無料通信アプリ「LINE(ライン)」などで送信させたとして、計5人の男を児童ポルノ禁止法違反(単純製造)容疑で書類送検した。同署によると、少女たちは友達作りなどを目的としたインターネット上のアプリで男たちと知り合い、裸の画像を求められると進んで撮影し送っていた。「誰かに構ってほしかった」「アプリのスタンプをくれると言われた」などが送信理由で、いずれも非行歴や補導歴のない「普通の子」だったという。
自画撮りで罪に問われた子どももいる。県警西枇杷島署は昨年11月以降、自分の裸の画像をツイッター上に掲載したとして、県内外に住む当時13〜17歳の少年少女計7人を児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)などの容疑で書類送検するなどした。少女らは「フォロワー(読者)数を増やしたかった」「みんなにちやほやされたかった」などと動機を供述。匿名で投稿し顔を写していなかったため、「ばれないと思った」とも話したという。
同署管内では14年、ある中学校で女子生徒が自分の裸の画像を男子生徒に送信することが一部で流行。画像を受け取った複数の男子生徒が補導されるなどした。男子、女子生徒とも「ノリでやった」と話したという。
自画撮りを巡っては、送信相手から画像をネット上に拡散させると脅される事件も全国で起きている。捜査関係者は「ネット上の相手に無防備に気を許し、危険性をまったく考えていないのが大きな問題」と危機感を募らす。全国webカウンセリング協議会の安川雅史理事長は「スマホという手軽な手段で、簡単に可愛く写真が撮れるため、子どもたちの間で自画撮りへの抵抗は少ないと言える。こうした事例を教材に、子ども同士や親子で話し合い、問題意識を持つことが必要だ」と指摘している。
毎日新聞2016年8月19日より