熊本大学保健センター 長岡舞子
地球上に生存するすべての生物は時計遺伝子を持っているといわれています。逆にいうと、体内時計遺伝子をもっている生物のみがこの地球に生き残っているとも考えられます。植物は、かぎられた日照時間に合わせ、朝の気温によらず葉を広げ、光合成でエネルギーを得ます。トカゲなどの変温動物は日光により体温を上げ、活動を始めます。このように、多くの生物が日光の力を最大限に得るために体内時計を合わせ、生活しています。私たち人間は電気の発明により、日光に合わせなくても光を得ることができ、仕事や活動を自分の意志で時間を決めることができます。文明の利器であることは間違いありません。電気によって得られた豊かさは多くあります。一方で、夜更かしが増え、特に若者の生活リズムが乱れやすくなっています。
夜更かしがもたらすもの
夜遅くまで起きていると、朝なかなか起きられません。すると、本来なら朝から分泌される「血圧を上げるホルモン」や「ストレスに対抗するホルモン(コルチゾール)」のリズムも遅れてしまいます。
結果として、たとえ午前中の授業に出ても、体はまだ準備ができていない状態。せっかく頑張っても、自分の力の70%くらいしか出せないかもしれません。
実は、私たちの体は「朝に活動できるように」前日の夜から少しずつ準備を始めています。だからこそ、生活リズムを整えることは、自分の持っている力を100%発揮するために、とても大切なのです。
また、睡眠が十分にとれると、抑うつ症状や不安も改善することがわかっています。
ここで、生活リズムに関する質問をします。
①体温は一日で1度も変わる?
正解はYesです。人の体温は一日中同じではなく、明け方に一番低く、夕方に一番高くなるんです。夕方にスポーツの記録が出やすいのも、この体温リズムのおかげだと言われています。
②体内時計は24時間より長い?
正解はYesです。人間の体内時計は実は 約24時間10分。つまり放っておくと少しずつズレていくんです。そのズレを毎朝「光」を浴びることでリセットしています。もし太陽がなかったら、私たちは毎日ちょっとずつ夜更かししていってしまうかもしれません。
③お腹の時計もある?
正解はYesです。体内時計は脳だけでなく、肝臓や胃など臓器ごとにも存在します。「夜中に食べると太りやすい」とよく言われますが、それは臓器の体内時計が「夜は休む時間」と決めているから。夜遅くのラーメンが体にこたえるのは、ちゃんと理由があるんです。
④体内時計ってなに?
体内時計とは、1日のリズムを体の中でつくるしくみのことです。
人間だけじゃなくて、動物も植物も、なんと細菌まで持っています。
たとえば…
植物 → 朝になると葉っぱを広げて、光合成でごはんをつくる。
カエルやトカゲ(変温動物) → 太陽を浴びて体をあたためて動き出します
魚 → エサを食べる時間や泳ぐ時間にリズムがあります。
つまり、生き物はみんな「地球の昼と夜」に合わせて体を動かしています。
⑤体内時計を持たない生き物っているの?
正解はYesです。実は、ほとんどの生き物は体内時計を持っています。しかし、例外(体内リズムが弱くなっている)があります。
深海の生き物:太陽の光が届かないから昼と夜が関係ない。
洞窟にすむ生き物:まっ暗な洞くつでずっと暮らしているので、時計が弱くなっている種類がいます。ですが、地球のほとんどの場所では昼と夜があるから、体内時計を持っていたほうが生き残りやすいと考えられています。
生活リズムの立て直し方
生活リズムは、光を浴びる時間、食事の時間で体内時計がリセットされ、正しいリズムを刻み始めます。以下の3か条から始めてください。
生活リズム3か条
1:朝は日光をあびる
部屋を明るくする、カーテンをあける等で十分です。朝の光を浴びましょう。
注意!太陽を直視してはいけません。これは危険ですのでやめましょう。
2:朝ごはんを食べる
朝、胃を動かすことでホルモンが出ます。バナナ1本、ゆで卵、おにぎり等、何か食べましょう。できれば3食、決まった時間に食べましょう。夜中に食べるのは控えましょう。寝る前に食べると、体は活動モードに入り、睡眠に悪影響です。
3:夜の電気は暗くする
寝る前の1時間前にはライトダウンしましょう。夕日の色のオレンジ色の光は睡眠に誘う光です。
熊本大学保健センターでは、センター考案の生活リズム手帳を用いて、学生の生活リズム支援を行っています。手帳は当センターホームページよりダウンロードできます。

